2013年富山にいかわステップ終了いたしました。
2日間にわたり、159組の参加者のみなさんがコスモホールのステージで演奏してくださいました。完成度の高い演奏の数々。近年、ますますレベルが上がってきたと感じました。また、新しいアンサンブルの形での参加も目立ちました。ご参加くださった皆様に感謝申し上げます。

長谷川美智子先生、金井玲子先生、当摩泰久先生
とご一緒に。講評とともに、新コーナー「先生に質問してみよう!」が大好評でした。先生方が質問した人のお名前を読んで、ひとつひとつ丁寧にお答えくださいました。先生との距離がぐっと近く感じた瞬間でした。質問カードは両日で約130枚集まりました。
当摩泰久先生のワンポイントレッスン。当摩先生の作品をレッスンしていただきました。「ツクシのあいさつ」「吸血鬼」。ピアノの演奏とソルフェージュにとても近いところから、作曲家ならではのレッスンでした。小さな練習曲にもとても濃いエピソードがこめられています。タイトルが悩ましい小品は、大切なレパートリーにしたいものです。宝石箱に大切にしまって、また近い将来に再び弾いて磨いてゆきましょう。これからの日々の勉強に、スタッフもおおいに勉強になりました。10分間では短かったですね。
金井玲子先生のトークコンサートは「聴いて楽しい練習曲」練習曲ばかりを集めたコンサート。5秒くらいのツェルニーの曲にはびっくりです。ギロック、バルトーク、モシュコフスキー、シューマン、ショパン。練習曲といっても、素敵な曲ばかり。多くの作曲家はこんなに楽しい練習曲を残していたのですね。いつか私も金井先生みたいに弾けるようになりたいなあと思った小さい方、きっと大勢いたでしょう。先日お亡くなりになった三善晃さんの作品には、直弟子である当摩先生が、三善先生のエピソードを交えながらレクチャーしてくださいました。金井先生の演奏は、みんなの憧れになりました。
ステップのひとつの醍醐味はアドバイザーの先生方のお話です。今回は3人の先生方の音楽人生が見えてくるような、素晴らしいお話でした。少しだけご紹介しましょう。当日はもっとさまざまなお話がうかがえました。
長谷川美智子先生。「音をよく聴くことが大切。悪い例をわざとやってみてどこが違うのか考えてみましょう。まねをしてみて、うまくできたら、自分の表現にしてみましょう。どうしてもできないときは、諦めてみるましょう。時間がたつとできるようになることがあります。」年齢に応じた勉強について、具体的なトレーニングや演奏のヒントがつまったお話でした。また、宗像ステーションの代表として、ベテランのピアノ教師である長谷川先生は、私たちスタッフの立場をよくご理解してくださり、生徒と先生をつなぐお言葉もいただきました。
金井玲子先生。「もっとよい演奏がしたいという強い気持ちが、苦しい壁や障害をのりこえる原動力になります。ピアニストをやめたいと思ったことはありません。演奏をするときは、まず、作曲家の思いを汲むことが大切です。作曲家の考え、時代や地域の様式、楽譜に書いてあること、よく知りましょう。テクニックとしてうまくいかないときは、頭をつかってより効率よくさらいましょう。何がうまくいかないのか、よく考えて。」中山靖子先生の愛弟子である金井先生。演奏はその人の人格がにじみ出るものだという中山先生のお話をふまえ、と食べ物をはじめとする生活や心の持ち方についてもお話くださいました。
当摩泰久先生。「我はドビュッシーになる、と決めたのが、作曲家になりたいと思った初めでした。ドビュッシーの音楽に心を奪われました。幼い頃、ギーゼキングが弾いた小品のレコードを何度も聴いていました。それは今でも鮮やかに残っています。また、演奏する舞台というのは、非日常です。危険があちこちに満ちている非日常です。緊張したり、思わぬ事故に見舞われたりします。その恐ろしい舞台を経験してゆくことで、日常も強くなるはずです。」作曲家でありながら、演奏する人の気持ちによりそったお話でした。当摩先生の趣味のよいお話は、ぜひ今後のレッスンに活かしてゆきたいと思います。ところで、中山靖子先生は、ギーゼキングの日本人唯一のお弟子さんなのでした。
参加者全員にわたったアドバイスシートには、これからの演奏やレッスンの方向性に対するアドバイスがたくさん書いてありました。3人の評価が分かれることもあるようですが、それこそ、音楽のさまざまな方向性を示していると言えます。評価が分かれても、アドバイスの方向性は同じだったりすることもあります。このアドバイスは、ぜひ大切にして、明日からの音楽人生の友としていただきたいと思います。
文責 にいかわステーション代表 畠山美佳子