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菊地裕介さん学校クラスコンサート

IMG_0893.JPG 2012年10月15日。富山県滑川市立田中小学校。正面玄関には格調高い黒松。豪華な木造校舎の小学校です。蜷川校長先生が出迎えて下さり、1年前から準備してきたコンサートがいよいよ開幕です。いつもの音楽室に菊地裕介さんが登場しました。

 4年生から6年生まで、合計3回のコンサートです。一回が45分。学校の時間割どおりに進みます。

 プログラムはプロコフィエフのバレエ「シンデレラ」より、6つの小品(作品102)。

 このプログラムから、ピアニストの意図がはっきり分かるでしょう。技術的にハードな難曲。しかも6曲とも個性的。お馴染みのシンデレラのお話から、一曲ずつタイトルはついているものの、決して「耳にやさしい分かりやすい」曲ではありません。

 小学生の前で、真剣に本格的な演奏をしようではないか。菊地裕介さんのメッセージがプログラムから伝わります。

 1、シンデレラと王子のワルツ
 2、シンデレラのヴァリエーション
 3、口論
 4、舞踏会へ向かうシンデレラ
 5、ショールの踊り
 6、愛をこめて

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 今日のために式服を着て少し緊張した面持ちの子供達。ピアノを囲んでお行儀よく座ってくれました。スーツを着こなし、おしゃれなブルーの靴でさっそうと登場した菊地さん。少し照れくさそうに「こんにちは。菊地裕介です。」と簡単な自己紹介でスタートしました。

 教室に貼ってあった年表の右はじの方に、プロコフィエフがいましたので、それも眺めながら、わかりやすく時代や社会背景について説明してくれました。また、バレエの情景とエピソードもひとつひとつ解説があります。

 「バレエ音楽は、ゲーム音楽に似てるでしょう。ほら、口論って、けんかのこと。ゲームの戦闘シーンの音楽ってこんなかんじじゃないかな。ゲーム音楽を作る人は、実はバレエの音楽を勉強して、参考にしながら作るんだよ。」

 ドラクエといっしょなんだ!と男の子たちは身を乗り出しました。バレエを習っている女の子もいました。戦闘シーンや一目惚れのシーンなど、わくわくする情景が目に浮かんでいるようでした。

 菊地さんの演奏は全力投球でした。子供達を相手にして、まったく妥協がありません。子供達は、水をうったようにしんと集中して聴いていました。シンプルなめでたしめでたしのおとぎ話ではなく、プロコフィエフの音楽には、政治的な時代背景をもとにして、人間の複雑な感情、心の奥底にある割り切れないもの、単純なハッピーエンドではすまない心理、人間のあり方への問い等が込められています。複雑な和声とリズム、またその逆をねらった単純な音階。プロコフィエフの書法にこめられているメッセージ。菊地さんは、そこまで子供達に伝えようとしました。
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 第6曲、「愛をこめて」は特に菊地さんの思い入れがあるそうです。

「僕はこの曲がいちばん聴いてほしかったのです。この曲があるから、作品102のシンデレラを選んだようなものです。最後にあらわれるハ長調の音階の美しさは、説明がつかないほどです。聴いて下さい。」

 45分間めいっぱいのコンサートの最後は、子供達と菊地さんの共演です。菊地さんのすっきりとしてめりはりのあるピアノの伴奏で、子供達が元気に歌ってくれました。

「歩いていこう」
「Believe」
「この星に生まれて」

 菊地さんはベートーヴェンのソナタ全曲録音を富山県内で行いました。その恩返しになればと、このコンサートをお引き受けくださったそうです。また、シンデレラは来年1月のニューイヤーコンサート東京文化会館小ホールでも弾かれるとのこと。
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 田中小学校のみなさん、学校クラスコンサートを受け入れてくださり、ありがとうございました。校長先生、教頭先生、各学年担任の先生方、細やかなお心使い感謝いたします。

IMG_0895.JPG このコンサートは文化庁の平成24年度次代を担う子どもの文化芸術体験事業です。公演の実施にあたりご尽力いただきました関係各位にお礼申し上げます。

富山にいかわステーション代表 畠山美佳子


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