2023年5月10日

佐藤 卓史先生セミナー(名古屋・2023/04/10開催)

2023年4月10日午前10時より日響楽器池下店2階において佐藤卓史先生のソナチネアルバム攻略法!と題して講座が行われました。
日常よく使われるソナチネアルバムを使い、アルベルティーバスや2音のスラー、緩やかなテンポのカンティレーナなどのテクニックの教え方をお話しして頂きました。
クーラウは1786年生まれで、ベートーベンに憧れて様式を真似している部分がある。
クレメンティーは1752年生まれでモーツアルトとつながりがある。
ドゥシェックは1760年生まれでハイドンとつながりがあった等と大作曲家達との関係を話され、ソナチネからソナタに進む道しるべになるような、お話しは興味深かったです。
アルベルティーバスの練習方法や2楽章のカンティレーナは指の平らな使う。
2音間のスラーは、始めの音は強めにリッチな感じで等、耳と体の感じの関係をつかむようにする事が大事ということ。
ドルチェは心を込めて歌う、アダージョはくつろぐ等言葉の表現が豊かでレッスンに取り入れたいと思いました。
基本的なことを先生の豊かな経験を生かして、丁寧に教えて頂き、もう一度きちんと復習してみようと思いました。

Rep:名古屋支部 岡田節子

2023年2月10日

菅原 望先生セミナー(名古屋・2023/02/06開催)

2022年度下半期ピアノ指導法シリーズセミナーの第3回が、2023年2月6日、日響楽器池下店ホールにて開催されました。講師は菅原 望先生。テーマは"力を磨く、イメージを音にするには~ブルグミュラーの練習曲を通して"

菅原先生のピアノの音色や両手のバランス、ニュアンスに富んだ音楽の講座の内容を言葉でお伝えするのは、とても難しいですが、各曲の特に大事なポイントだけあげたいと思います。

・すなおな心
Allegro moderatoはある程度前に進むが気持ちは落ち着いて。すぐに出ないで、1小節分1.2.3.4と数えてから弾き始める。
cresc.を両手同じようにつけている人が多いが、左は右と一緒に大きくならないでバランスを考える。フレーズをわかりやすく示すために先生は生徒の目の前から山(放物線)を書いてリードする。

25. 貴婦人の乗馬
あまり速く弾かない方がよい。拍感を↓↑↓↑と弾く人が多いが、乗馬の感じは↑↑↑↑手首でなく腕を使って。
3段目、3連符は2拍を1つに。後のPのところは先生が高いほうで応えるとよい。

(18の練習曲より)
・羊飼いの家路
バス(1拍め)はあまり強くなく。下向きに↓ならない。どのくらいのバランスで弾くのか考える。

・ジプシー
最初の左のオクターブは下を強く。ピアニッシモは緊張感をもって。体の内向きの力(体の中央の力)を使う。ここで菅原先生は脇を少し締め、体を前に倒された。

13. 大雷雨
人気のある曲。左手オクターブのクレッシェンドは1の指が大事。粘土を押すように               
ページの変わり目のアルペジオはなくてもよい。アルペジオにする時は右の親指と左をあわせる。アルペジオ...指が動いてひじもついていく感じ。先にひじが動くと指に力が入らない。ニ長調になったところ、メロディーの3和音の上の音、フレーズ長く。

14.ゴンドラの船頭歌
最初のラは右がとっても良い。2小節間同じペダルで良い。メロディーは深く体の中心から出る音。装飾音はゆっくりめが良い。最後は単にだんだん弱くなるのではなく、何らかの理由をもって。(1日が終わる、ような)

15.風の精
冒頭のピアニッシモは、何かが近づいてくるような気配で始まる。主部のメロディーは指先の骨で弾くイメージ。すぐ降りたところは普通に弾いてニュアンスを変える。右ペ-ジanimatoの左手オクターブは1.2.3.4.5.6.7.8.9と数えたほうが良い。次の3小節も同様に。(1小節ずつにならない)

菅原先生の手にかかると、ブルグミュラーがものすごく素敵な曲に変わりました!
まるでピアノの魔術師です。耳と心にいっぱいビタミンをいただいたような気がしました。そして生徒にもこの感動とすばらしさを伝えたいと思いました。            

2022年1月 7日

石黒 美有先生セミナー(名古屋・2021/12/03開催)

2021年12月3日(金)、日響楽器池下店2階ホールにて、石黒美有先生をお招きして『バイオリンとイタリア語でレッスンを楽しくする音楽表現アプローチ〜弦楽器ボウイングと、生きたイタリア語から〜』と題したセミナーが開催されました。
石黒先生はイタリアに留学経験があり、ご主人もイタリア人で、まさに生きたイタリア語をご存知の先生です。今回は、先生のご主人でバイオリニストのサルヴァトーレ・ピェーディスカルツィ先生にバイオリンの奏法も丁寧に見せて頂けるとても贅沢なセミナーとなりました。

 音楽表現を伝える時に難しいポイントであるアーティキュレーション。アーティキュレーションは音と音をつなぐ部分、身体でいえば関節の部分。
ピアノ以外の楽器を知る事でピアノを弾いているだけでは理解しづらいアーティキュレーションのコツを伝えられたら〜と、先生のご著書「はじめてのピアノコンクールで生徒を成長させる指導法」より数曲を取り上げてお話しいただきました。

211203nagoya_1.jpeg

◆「アレグロ 変ロ長調K.3」W.A.モーツァルト
 ⭐︎2音スラー
 バイオリンでは、2音を一つのボウイングで演奏。1音目は弓の4分の3ほど、2音目は残りの4分の1ほどを使ってスラーを作る。ピアノでは2本の指で手の枠を作り、手の甲をつり上げるようにして指から指へ移す。
◆「甘い夢」チャイコフスキー
 ⭐︎チャイコフスキー の曲にはメロディーを弦楽器のように歌わせるレガートがよく出てくる。(例:ノクターンOp.19-4)バイオリンでは音程が広がるとポジションが遠く、特に神経を使う。
◆「フーガハ長調」パッヘルベル 
 ⭐︎♩を感じる
 バイオリンでは、続く♩をバルツァート(はずむ)で奏する。ピアノでは手首とひじをゆるませる。
◆「あやつり人形」ローデ
 ⭐︎左手の分散和音は、1小節♫♫を一つのボウイングでまとまりをもって奏する。
◆「ソナチネ へ長調 第1楽章」ベートーヴェン
 ⭐︎弓を使う量の変化で音に方向性を持たせる
◆「ソナチネ Op.36-4 第1楽章」クレメンティ
 ⭐︎第一テーマの右手はバイオリン、左手はファゴットによるタンギング
~など、バイオリンのボウイングを見ながら、そのボウイングが紡ぎ出す美しい音とアーティキュレーションを感じることができ、とても心地良い貴重な時間でした。自分の演奏にもレッスンにも生かしていけたらと思います。
211203nagoya_2.jpeg また、楽語はイタリア人が生活の中で使っている言葉。
◎『だんだんゆっくり』
⭐︎ritardando ものが時間的に遅れている
⭐︎rallentando 締まっていたものがふわっと緩む。
⭐︎smorzando まぶしいものがかげっていく。パワーが衰える。
⭐︎morendo テンポも強弱もすべてのものが衰えていく(深刻な感じ)。

◎『速く』
⭐︎allegro 幸せそう、元気そう、嬉しそう。
⭐︎vivace 生きる、生命力があふれている、小鳥や子どもが走り回っている。
⭐︎con moto 動いている状態を続ける。
⭐︎Presto 動く速度が速い。
他にも沢山の言葉の意味をわかりやすく教えて頂き、私の中でこれらの言葉の捉え方が変わりました!
生きたイタリア語の意味を知る事が、レッスンを楽しく伝わりやすいものにできると実感しました。

他、イタリアの留学事情、音楽教育についても教えて頂き、日本との違いに驚きました。

そして先生方が演奏してくださるバイオリンとピアノの音の美しいこと!私にとって癒しの時間にもなりました。続きのセミナーがありましたら嬉しいです。石黒先生、素晴らしいセミナーをありがとうございました。

        名古屋支部 赤松佳容子

2021年11月 8日

西尾 洋先生セミナー(名古屋・2021/11/01開催)

2021年11月1日(月)日響楽器名古屋池下店2Fホールにて、名古屋支部2021年下半期指導法シリーズセミナー第2回に西尾洋先生をお招きし、「ショパンの≪ワルツ≫探訪 ~作曲の瞬間を追体験しながら~」が開催されました。

211101nagoya_1.jpeg 私たち指導者は、年齢問わず小さな子どもでも芸術的な作品を学んでほしいものです。それがショパンの作品であればどんなにか素晴らしいことでしょう。その芸術的な作品を演奏するために、「どのようなイメージを持つのか!また、そのイメージが根拠のあるものになるようにアナリーゼで仕組みを理解し、音のその先を自発的に考える!」ということを、ショパンのワルツを題材に西尾先生に詳しくお話しいただきました。

例を挙げますと、Op.34-2では、イ短調で自分がワルツを書くとしたら...と、指導者は生徒に問いかけ、どんな速度のどんなメロディーのワルツにするかを考えさせて8小節くらいで作曲させてみることを勧められました。それによって、生徒は自らが選んだ速度標語により曲想がクリアになります。また、メロディーは順次進行が基本ですが、そのルールを打ち破るとその先がどう繋がっていくかでストーリーが作られていく過程が実感できます。
Op.64-2では、例えば繋がっていく音の感じ方や半音階に隠された魅力をどのように表現していくかなど、ある音が次にどう動いていくか、常に思いつく過程を感じるという体験の連続を具体的に教えていただきました。
子どもたちはドリルなどの書く練習で楽譜への意識が高まり、またグループレッスンでメロディーを作った時の気持ちをお互いに伝え合ったりすることも効果的とおっしゃいました。そのような体験の積み重ねによって作曲家が曲を作った時の気持ちを想像して、こう弾きたいと思う気持ちの芽生えを大切に指導していかなければと強調されました。
他にも、調の揺らぎや独特な和声、四声体で弾くことなどを理解した上でショパンの作品を読み解かなければならないのですが、演奏とは作曲家の追体験をすることで、あたかも今作曲して感動することが魅力的な演奏に繋がることを確信しました。

211101nagoya_2.jpeg

西尾先生の講座はいつもピアノを学ぶ子どもたちへの深い愛情を強く感じます。偉大な作曲家たちが残してくれた素晴らしい作品を、子どもたちの感性や自主性を大切にしながら正しく確実に伝えていけるよう心掛けていきます。
西尾先生、素晴らしい講座をありがとうございました。
                                野原眞由美

2021年11月 5日

清水 皇樹先生セミナー(名古屋・2021/10/12開催)

2021年下半期ピアノ指導法シリーズセミナーの第1回が、2021年10月12日日響楽器池下店ホールにて、開催されました。テーマは"レッスンに役立つショパンマズルカの指導法" 講師は清水皇樹先生。
地元で大活躍の清水先生。大勢のピアニストを世に送り出していらっしゃる先生とあって、コロナ禍でも会場は席が埋まり、オンラインでの参加者も多数ありました。

211012nagoya_1.jpg マズルカはショパンの故郷ポーランドの民族舞踊。ショパンはその舞踏のリズムをピアノ曲に取り入れ、踊る要素は残しつつも実際に踊るのではなく、ピアノ曲としていかに美しく表現するかという観点で、生涯にわたってマズルカを書きました。(絶筆もマズルカOp.68-4)

マズルカのリズム(主に3種類)
1.マズール  3/4 ♩ ♩ ♩
2.クヤヴィアク   ♩
3.オベレク    ♫ ♫ ♫

そのショパンが最も大切にしたであろう点について、いくつかのマズルカを弾きながら講座が進められました。
ショパンを演奏する上で最も大事なことはcantabileそして20歳でフランスに行き、39歳で亡くなるまで1度も帰ることが叶わなかったノスタルジー。
講座の中で特に強調されたcon animaとanimatoの違い。con animaをanimatoで弾いてはならない。conは~を持って。animaは魂。つまり魂を持って演奏しなければならない。・・・ということをピアノでそれは見事に弾いてくださった。"4小節でへとへとになるんだよ"
ジョルジュ・サンドとの破局も彼に色濃く影響を与えました。半音進行や曲の終わり方の素晴らしさ。たった1音で曲調を変えてしまう。また転調の素晴らしさ。・・・といったショパンの天才のひらめきを清水先生はピアノで示してくださいました。先生のピアノそのものがcon anima(魂を込めて)でした。ショパンの素晴らしさはこういうところにあるのだと気づかせていただきました。

211012nagoya_2.jpg 折しもショパンコンクール真っ最中の今日。遠いワルシャワでの演奏がリアルタイムで聴けます!"マズルカはショパンの真髄。マズルカ賞を取るのは1位になるより価値があるとされているんだよ"と清水先生は話されていました。コンクールにマズルカにますます興味が湧いてきました。清水皇樹先生、ブラヴォーでした。

2020年12月18日

中田 雄一朗先生セミナー(名古屋・2020/12/07開催)

2020年度 下半期ピアノ指導法 シリーズセミナー 第3回(全4回)四期別指導法とそのポイント
講師:中田 雄一朗

2020年12月7日(月)に日響楽器 池下店2Fホールにて中田 雄一朗先生をお招きし、「2020年度 下半期ピアノ指導法 シリーズセミナー 第3回(全4回)四期別指導法とそのポイント」を開催いたしました。

会場とオンラインの2つの方法で多勢の先生方が受講されました。

 『四期別にこう弾かなければいけない』というのは基本的に無く自由に表現すればよい。時代を意識せず各作品一曲一曲と向き合う事が最も大切。
 まず冒頭でこのようにお話しをされ、レッスンでよく用いられる各時代の曲を例にあげながら、ピアノ演奏を交えてお話ししてくださいました。
その一部をご紹介します。

☆バロック
 まず意識するのは装飾音。理論的にはいろいろ考えられるが、子どもが弾く場合は、その子が一番入れやすい装飾音を入れるようにするとよい。コツとして、すべての音を耳で聴き取ると粒立ちが良くなる。
 ♪インベンション2番(バッハ)
・7度や8度の跳躍を感じる事が大切だが、感じすぎるとロマン派のようになってしまうので節度を持って。
・どこにクライマックスを持って来るのか考えて、そこに向かう時に少し時間を使う(エネルギーをチャージする)のはNGではない。
・左手は右手の倍は練習する。

☆古典
 ♪ソナチネop.36-1(クレメンティ)
・左右のちょうど良いバランスを見つけ、左にもある程度の表情を感じ取る。
・提示部の最後は終わりではないので、次に向かう気持ちでのブレスを大切にする。
・フィンガーペダルは、アルベルティバスなど古典派に生かせるテクニックの一つ。
・全楽章を勉強する。

 ♪ソナタK.545(モーツァルト)
・4小節目のトリルは『ソファミ』のラインを崩さないように入れる。
・アルベルティバスのフィンガーペダル。
・何の曲でもそうだが、同じ部分が続く時は何か違う表現をする。
・和音の進行、伸びている音をよく聴く。

☆ロマン
 ♪貴婦人の乗馬(ブルグミュラー)
・冒頭からのメロディーは、一番上の音がバランスとしてよく出るように。拍頭は程よく強く(やり過ぎNG)。
・雰囲気の変化をよく感じて。

 ♪ゴンドラの船頭歌(ブルグミュラー)
・ハーモニーの動きを大切に。
・左手の伴奏のアクセントは、おだやかに波があたるような感じで。
・ロマン派の楽曲では、今までの時代の曲以上にメロディーを歌だと思って、歌う時の息と同じようにフレーズを作ると流れが良くなる。

☆近現代
 ♪アラベスク第一番(ドビュッシー)
・今までにないにじむような響きをきれいに重ねていく。ペダルの使い方が重要。
・バスのラインを響かせ、左手にも歌心が必要。 すべてに共通して大切な事は、耳を使い楽譜をしっかり見ること。よい耳を作るには、常に自分の音をよく聴き、小さいうちから色々な楽器の生の音を聴くと良い。沢山遊んだり美味しい物を食べたりと人生経験も表現力につながる。

中田先生がピアノを演奏されお話しされるお姿に〈音楽が好き〉なお気持ちが溢れていて、すっかり引き込まれあっという間に時間が過ぎていました。この様な気持ちで音楽をすることもとても大切な事とあらためて感じたセミナーでした。

中田先生、ステキな学びの時間をありがとうございました。


201207nagoya1.jpg

Rep:ピティナ名古屋支部 赤松佳容子



2020年11月11日

【セミナー実施レポート】「舞踏へのアプローチ〜メヌエット編〜」

舞曲へのアプローチ 〜メヌエットの世界〜
講師:田中 巳穂

2020年10月26日(月)に日響楽器 池下店2Fホールにて田中 巳穂先生による「舞踏へのアプローチ〜メヌエット編〜」が開催されました。

オンラインと対面の両方でのセミナー開催でしたが、この日は秋晴れの爽やかで気持ちの良い天気にも恵まれ、会場にはマスク姿のピアノ指導者の方が数多く参加されました。
田中先生は2018年に下半期指導法セミナーを開催下さっており、今回はその続編という事で、「メヌエット」を取り上げ、奥深い舞曲の世界に私達を誘って下さいました。
今回のテーマは『バロックダンスの時代背景に思いをはせ、ピアノで弾くメヌエットの可能性を考える』というものでした。

「バロック・ダンスファンタジー」解説より〜
「バロックダンスは、宮廷貴族の日常の所作を支える基礎とされ、ポジションを知らなければお辞儀もステップもままならない。美しい歩き方の延長にダンスのステップがあり、その歩調が舞曲のリズムやテンポとの結びついた。」とお話し下さり、貴族が衣装を身につけてメヌエットを踊る映像も見せて頂きました。
優雅で品があり、ため息が出るような美しいダンスの世界でした。

201026nagoya①.jpg

次に、メヌエットについて、特徴や踊られ方、ステップや時代背景についてお話し下さいました。

メヌエットとは...
・2小節がひとつの単位である。
・軽いつま先立ちで踊るダンスであり、1.2.3.4.5.6とカウントした6拍目で、両足をくっつけるステップが特徴。
・メヌエットは舞踏の王とも呼ばれ、18世紀後半まで社交ダンスとして踊られた。
・4分の3拍子のブランル(揺れる)から発展した中庸のテンポのフランスの舞曲である。
・もともとはフランス南部の快活な踊りであったが、ルイ14世が宮廷舞踊に採用してから、ヨーロッパの上流社会に流行。
・王様の舞踏会のはじめに、メヌエットが踊られていた。
・最初は速めのテンポで踊っていたが、だんだん遅いテンポで踊られるようになった。(ルイ14世が太った事が要因かもと言われている)
・お辞儀と抑制された動きが特徴である。

次にプレインベンションに出てくるメヌエットを9曲取り上げて、一曲ずつ解説下さり、フランス組曲にどのようにして結びつけていくのか、お話し下さいました。
・チェンバロでは強弱の変化は出来ないので、Durとmol Iの違いをはっきりさせると良い。
・アーティキュレーションの付け方
・重さのかけ方
・テンポの設定

説得力のある演奏に結びつけるには...
①テンポ
②リズムによる揺れの違い
②アーティキュレーション

201026nagoya②.jpg

これらを考えて演奏することが必要である事を教えて下さいました。
あっという間の2時間でした。

最後に先生は...
「舞曲を生徒達に教えるには、
空気感、感触、揺らめき、などを言葉で表すよりも、その空気の中に生徒を入れたいと思います。ひざを曲げたり、伸ばしたり、遠くを見るような空気感を感じさせる事が大事です。説得力のある演奏が出来ると素晴らしいですね。」とお話し下さいました。

講座を聞き、改めて舞曲は奥が深く、もっと勉強したいと思いました。舞曲の素晴らしさを理解し、少しでも素敵な演奏を引き出す事が出来たら...と思いました。
貴重なお話をお聞かせ下さり、田中先生、本当にありがとうございました。
次のセミナーも楽しみにしています。

   

Rep:ピティナ名古屋支部 林公子

2019年11月29日

【セミナー実施レポート】「楽譜に書ききれない"表情のモト"って?」-音ではなく"音楽"を読みとく方法とは-

2019年11月18日(月)に日響楽器 池下店2Fホールにて轟 千尋先生をお招きし、「「楽譜に書ききれない"表情のモト"って?」-音ではなく"音楽"を読みとく方法とは-」を開催いたしました。

轟先生はピティナではおなじみの作曲家で、子どものためのピアノ小品や名曲のアレンジなど沢山お書きになり、コンペの課題曲にもたびたび採用されています。「楽譜に書かれていることの中には、目に見えるものと見えないものがあり、実は音楽の表情のほとんどが、楽譜の裏側に隠されているのです。直感でも想像力でもない、確かなよりどころから作曲家の意図を読み解く方法を紹介します」という轟先生のメッセージにワクワクしながら出かけました。

前半は轟 千尋著「いちばん親切な楽譜の読み方」(新星出版社)の中からブルグミュラー25の練習曲を使って解説されました。一部をご紹介します。

☆ベースを読む・・・楽譜は大まかにメロディ、ベース、和音の3層にわけられるが、一番低い音を受け持つのがベース。そこに注目してみる。

☆マクロ読み・・・細かい分析も大事ではあるが、時にマクロ読みも必要。  

 素直な心・・・大きくA(8小節)は1度、B(8小節)は5度。Bの最後で1度に戻る。主音Cにたどり着いた時の安心感。達成感。到達感。

☆動き出す喜び  

 アラベスク・・・1段目のベースはずっとラ。2段目でソに変わる。表情が変わる。教える時、ベースにラインをビーっと入れる。変わったところに◎をつけたりシールをはると良い。  

 (例)モーツァルトのアイネクライネナハトムジークの冒頭部分。ユニゾンのあと、ベースはずっとソ。息をひそめている状態からソソララシシソソと動くと音楽も(喜んで)動き出す。

☆ベースの出し惜しみ・・・ベースは響きを底辺から支えて響きの性質を決める。  

 牧歌・・・最初の2小節はメロディだけ。支えのない宙ぶらりんの状態。3小節目でベースが出てきて初めて安定感が得られる。

後半はご自身の作曲による、星降る町の小さな風景―ピアノのための28の小品―から。

まずその中の1曲を先生がお弾きになり、どんなイメージが浮かんだか、何人かの人がさまざまに答えた。(曲は月に想う)

この曲集はあえて I IV Vを使わなかったそう。タイトルも気にしないで自由に発想してください、とのこと。

☆和音の何番目の音がベースになっている?

根音が1番下に来る基本形は真四角。安定感のある響き。(モーツァルトK.545第1楽章第1主題)

第3音が1番下に来る第1転回形は丸。転がるような身軽さのある響き。(同第2主題)

第5音が1番下に来る第2転回形は逆三角。不安定で次の和音に寄りかかりたくなる性質。

雨上がりの朝・・・冒頭左手は1転なのでやわらかいタッチで。♭系から♯系に変わる色合いの違いを感じて。終わりはあえてV度。(宙ぶらりん)

霧に浮かぶ湖・・・2度の連続。水や自然を感じさせる。

桜のころ・・・この曲も冒頭のベースは1転。基本形では重すぎる。花びらの軽さを出すため1転にした。 憧れ・・・憧れの女性のイメージであえて♯6つのFisdur.(Gesdurではない。FやGでもない)

最後にやさしい夢を演奏してくださいました。我が子という、自分の命より大事なものを胸に抱いた時、もう何もいらないと思った時、できた曲だそうです。 私たちへの贈り物のように弾かれるのを聴いていたら、感動でいっぱいになりました。

ベースを読むことで楽譜に書ききれない作曲家の意図に気づく喜び、もっと言えば、音楽に携わる喜び、指導者としての喜びまで気づかせていただいた、素敵な講座でした。

Rep:森崎 一子

2019年10月25日

【セミナー実施レポート】フランスの音楽事情~フランス近代作品の演奏のコツ~

2019年10月21日(月)に日響楽器 池下店2Fホールにて中沖 玲子先生をお招きし、「フランスの音楽事情~フランス近代作品の演奏のコツ~」を開催いたしました。

2019年、10月21日(月)日響楽器池下ホールにて、パリ・エコールノルマル音楽院の教授を勤められ、フランス作曲家の作品にも精通されていらっしゃるピアニストの中沖玲子先生に、現在のフランスを取りまく音楽事情についてお話頂きました。
まずはじめに、中沖先生ご自身のエピソードから〝小さい頃からピアノに親しんでピアノを好きになる事が大事〟とお話し下さいました。フランスのピアニスト、ルイサダも〝小さい頃に教えてもらった先生に感謝している〟と話していたそうで、中沖先生もご自身の先生に感謝していると話されました。早期のピアノ教育としては、日本でもフランスでも、ピアノを好きにさせる事が大事というお話しをされた上で、フランスの音楽事情をとてもわかりやすくお話し下さいました。
『フランスの音楽事情について』
・フランスの入試、コンクールでは先生のコネクションは全くなく、試験でも外部から審査員を招いたりして、審査はとても平等である。
・学費がとても安い。パリ音楽院は無料。エコールノルマルでも日本の国公立大学の学費より安い。この点で日本と差がある。
・フランスではソルフェージュをとても重視している。フランスのレベルは高く、拍子、調性、小節数も知らされずに、いきなり弾かれた音を聴音する。調の判定も自分の耳で、和声や初見演奏も重視される。
・フランスは食べ物は見た目も綺麗で美味しく、誇りを持って作っている。フランスには今だに、中世のようなサロンがあり、食事をしながら音楽を楽しんでいる。
・演奏会ではチケットを手売りする事は無く、町で普通に生活している人が楽しみに演奏会に来る...
この点でも生活の中に音楽があると言える。
『フランス音楽について』
フランスの作曲家の中でドビュッシーの「ゴリウォークのケークウォーク」「花火」を取り上げ、実際に若手ピアニスト演奏をしてもらいながら、解説して頂きました。
【ゴリウォークのケークウォーク】
・子供の領分は、ドビュッシーの娘シュシュちゃんの為の絵本のような曲である。ケークウォークとは...ステッキを持ってつきながら踊るもので、ゆっくりめである。
・当時絶大な人気だったワーグナーに対して、敬意と皮肉が混ざっているフレーズがあるなど...
【花火】
・最後の部分にはフランスの国歌が使われている。
・出だしのところは、花火の始まる前のフランス人達のおしゃべりしていると様子。
・花火のテーマの部分の弾き方など...
また、フランス音楽の特徴としてパール奏法...真珠の粒のようにポルタートで弾く奏法が大事である事。アールヌーボーの影響を受けている事。フランスものは、客観的に弾く事。フランスのエスプリが大切である事など話されました。
最後に、「音楽をやっている人達が、音楽をやっていて良かったと思える世の中が来るといいと思います...」とおっしゃったお言葉がとても心に残りました。
同じように思います。
中沖先生、素敵なお話をありがとうございました。とても興味深くもっと聞いてみたいと思うセミナーでした。

Rep:林 公子

【セミナー実施レポート】2019年度 上半期ピアノ指導法 シリーズセミナー 第2回(全4回)流れるフレーズのための指導法

2019年5月20日(月)に日響楽器 池下店2Fホールにて鈴木 弘尚先生をお招きし、「2019年度 上半期ピアノ指導法 シリーズセミナー 第2回(全4回)流れるフレーズのための指導法」を開催いたしました。

音楽は、時間の芸術、記憶の芸術、イントネーションの芸術である。2つのフレーズがある場合、1つ目のフレーズを聴き手に記憶してもらうことで2つ目のフレーズが生きてくる。記憶してもらうには、イントネーションによって意味のあるものにし、聴き手に届ける事が大切。演奏は、絵画に例えると描いている時間を見せているようなもの。
このようなお話からセミナーは始まりました。
フレーズは『開始→中心→終わり』でできているが、もともとは平らなものが、リズム、音の高低、ハーモニーなどの要素が複数重なって引力が発生し様々な形となる。弾き手は、中心に向かっていく動き、中心を通り過ぎて終わりに向かう動きを大切にフレーズを演出する。聴き手は、フレーズの中心がどこにあるのか、そのフレーズが終わった時にわかる。なんとなくの感覚だけで演奏するのではなく、このような考えを裏付けする事で伝わる演奏になる。
そして、レッスンでもよく使われる曲を例に挙げ、演奏を交えながらお話しくださいました。
(演奏曲例)
○クレメンティ/ソナチネOp.36-3
○ショパン/ワルツOp.64-2 ・ノクターンOp.9-2、
○メンデルスゾーン/ベニスのゴンドラの歌、
○ブルグミュラー/ゴンドラの船頭歌・風の精・アラベスク・やさしい花・せきれい~etc.
音の流れを風に例えて、風は目に見えないけどそれに影響をうけるもの(木や葉っぱの揺れなど)により見えるものとなる。音楽においても風による気圧変化があって音が流れる。伴奏で風を送ることでメロディが動くことや、16分音符のような軽い音符は風によって動きやすいこと、フレーズの頂点に向かって風が吹き上げるイメージを持つこと。
また、弾いている自分にとってメロディーがどこにあるのか、常に位置関係を意識すること。1つのフレーズの中で音がどこから入ってどの方向に動くのかイメージすること。メロディーが表と裏が対になっている場合、裏を弾くときには先ほどの表を感じながら違った音色や響きを使うこと。これから弾くフレーズを、形、奥行きなど3次元でとらえて意識することが大切。
先生がおっしゃる内容は、自分の演奏のためにも生徒さんの演奏のためにも肝に命じておきたいことばかりでした。
そして、鈴木先生が奏でられるピアノの音は、大変美しく多彩で、その素晴らしいピアノからもお話しからも感動と多くの学びを頂きました。
鈴木先生、本当にありがとうございました。

Rep:赤松 佳容子


過去の記事(月別)


HOME |  協会概要 |  入会案内 |  採用情報 |