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中井正子先生「ラヴェル名曲選」講座

2016年6月8日(水)10:00~12:00

ピアニスト:中井正子先生による

「ラヴェル名曲選」 講座を開催いたしました。

♪「ソナチネ」 「亡き王女のためのパヴァーヌ」 「水の戯れ」 

♪「小品集」より 「ハイドンの名によるメヌエット」「ボロディン風に」「プレリュード」

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★「ソナチネ」 1905年

・・・ソナチネは小規模な「ソナタ」を意味しますので、第1、3楽章の音楽形式をある程度理解して

  演奏しましょう。

  第1楽章 簡素な「ソナタ形式」を用いています。

  第1主題部(1~12小節)、第2主題部と小結尾(13~28小節)で構成される提示部、

  展開部(34~58小節)と再現部(59小節以下)による均整のとれた形式を意識しましょう。

  第3楽章 

  2主題(A・B)からなる一種のロンド形式と考えられます。

  B主題部(37~59小節)は、第1楽章、第1主題を利用しています。

  AB(1~59小節)、A'B'(106小節以下)という三部分から構成されています。

  「メヌエットのテンポで」と書かれた第2楽章の中間部39~52小節)でも、

      右手に第1楽章第1主題が現れ、左手には音価が倍に拡大された同主題が対位法的

  組み合わされています。

  このように同一主題が全楽章に用いられ全体を統一していますので、近代フランス音楽特有の

  "循環形式"が使われていると考えて良いでしょう。

  構成的なラヴェルの音楽の一面がうかがわれます。

  各楽章のテンポについて

  ラヴェル自身や指導を受けた音楽家たちの意見を集約すると・・・・

  第1楽章は しばしば速く弾かれ過ぎるという点。

  第2楽章は「遅めに、しかし流れて、特にリズムの正確さを期して」、

  またベートーヴェン(ソナタ第18番作品31-3)のメヌエット楽章のテンポで(参考にして)。

  第3楽章については「非常に速く、しかし追いたてられるようにでなく」「慎重すぎず、容赦なく」

  演奏することを望んでいました。

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 ★亡き王女のためのパヴァーヌ 1899年

 後に作曲家自身によって1910年管弦楽化され、ラヴェル初期の名品です。

 メロディは、オーケストラの場合 楽器によって聴こえ方が変わりますから ピアノの場合も

 変えて弾いてみると良いでしょう。

 ★水の戯れ 1901年

 レガートは、音がつながるのではなく、"音が響く"フレーズとして考えると良いでしょう。

 ペダルについて

 2Ped.は ダンパー、弱音両ペダル → 左右のペダルを同時に使います。

 ・fのまま una corda をつけるのは、「エネルギーがあった上で、音色を変えてほしい」

  という作曲家の意図があります。

★ハイドンの名によるメヌエット 1909年

 ハイドン没後100年記念(1909年)のために作曲されたこのメヌエットは、26のアルファベット文字を

 3オクターヴ半の音階にあてはめ、ハイドンの名前のアルファベットが

 音名に置き換えられています。

★ボロディン風に 1913年

 「~風に」は、当時フランスで流行していた、有名な作曲家作品のパロディー音楽です。

 1889年のパリ万博博覧会を契機に、ムソルグスキー、リムスキー・コロサコフ、同様に人気が

 出てきた、ロシア近代音楽の作曲家、ロディンの音楽的特徴を生かした

 パスティーシュ(模造品)です。 ノーブルな演奏会用ワルツに作曲されているところが

 ラヴェルらしい才気を感じさせます。

★プレリュード 1913年

 パリ音楽院の初見視奏コンクールのため、1913年に作曲された小品です。

 全体的にラヴェルらしい白鍵を中心とした旋法的な優しい響きに、12~15小節に一番特徴的に

 みることができるような、半音階的にぶつかり合う、クールで刺激的な和声の魅力が聴かれます。

 やさしい作品ですから是非、発表会で演奏してみるのも良いでしょう。

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中井正子先生 毎回素晴らしい演奏と解説ありがとうございます。

ご来場いただきました皆様 長い時間ありがとうございました。

お詫び

開始時間が予定より30分遅れ 皆様にご迷惑をおかけしてしまい 大変申し訳ございませんでした。

次回のご案内

2016年12月14日(水)10:00~12:00

ドビュッシー「子供の領分」全曲

 


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