講師:山本美芽
日程:5月1日
会場:楽器センター金沢
昭和生まれの私は、当時王道のバイエルを弾いて育った。右手がハイC、左手がミドルCで始まるこの本は、導入期が低年齢化している今、とても難しいものに思える。 平成以降に出版された導入教材は多種にわたり、アプローチも様々だ。楽器店にたくさん並ぶ楽譜の中から自分なりに探りながら、気になる教本について調べたり、セミナーに出向いたりしながらやってきた。
今回、山本美芽先生の「ピアノ教本、かしこく選ぼう」(石川県 開進堂楽器 楽器センター金沢)セミナーを受講して、少し賢くなった気がしている。先生が研究されたレジュメをもとに、人気教本五冊を弾き合いながら特徴を学ぶことで、各教本の意図することがクリアになった。教本一冊について学ぶ機会はあっても、たくさんの教本を比較して学ぶ機会はあまりない。全国に繋がる山本先生のネットワークで、今現場で起きていること、全国のピアノの先生方の事例も教えていただきながら、地域の先生方と思いを共有することができた。
平成の教本の特徴としては、「お家でお母さんのフォローがなくてもなんとか進めていけるもの」が多いことが分かった。働くお母さんが増え、家での練習に付きっきりになってもらうことは難しい。専業主婦のご家庭でも習い事のかけ持ちが多く、子どもも大人も忙しい。レッスンで学んだことをもとに、子どもがスモールステップで自力で進めていける教本が全国的に売れ筋となっているそうだ。
導入期、つまずくポイントとなりやすいのが「ポジション移動」。ミドルCを習得した後、1の指を鍵盤のどこに置いて始めるか(移調)、扱う箇所や進め方が教本によってものすごく違う。子どもによっても、すんなりいける場合と混乱する場合がある。もしつまずきそうになったとき、「できない、もうピアノイヤ!」となる前に、こちらが対策を取ることができれば、子どもはつらい思いをしなくても良さそうだ。
その分こちらは、教材の特徴をしっかり理解して、あの手この手でアプローチを変え、引き出しをたくさん持つようにしたい。そして欲を言えば、基礎基本・表現力諸々を身につけながら、よりスムーズにブルグミュラーにたどり着きたい。
「教本は100%ではない。これでいいのか?と自分なりに疑問を持ち、考察すること」考察の方法としては、一冊まるごと弾いてみる、という方法が先生から提示された。5月に発売される先生の新刊「ピアノ教本ガイドブック」をもとに、改めて様々な教本を弾き比べながら確かめてみたい。
メールやSNSで簡単にやり取りができる時代、直接の対話を通して相手(子どもたち、お母さん方、地域の先生方、そして山本先生)を知ることの大切さを感じたセミナーでもあった。平成のピアノ教室は、時代と共に変化しつつ、人から人へ音楽の変わらない美しさを伝えていきたいと感じた。
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文・大道友萌子(おおみち ともこ)(ピアノ講師)