ほぼ毎月、西尾先生によるアナリーゼと和声を学んでいる音の葉研究会にとって、いよいよ2013年最後の講座が行われました。
何かと慌ただしい年の瀬に集まって下さった会員の先生方、本当にこの日も、そして1年間お疲れ様でした。
◆講師:西尾洋先生
◆場所:和幸楽器大宮店
◆日時:12月19日(木) 10:15~12:15
◆内容:アナリーゼ<シューマン はじめての悲しみ>
<シューマン トロイメライ>
<メンデルスゾーン 甘い思い出>
<バッハ シンフォニア 6番>
会場が、いつもと違うお部屋となりました。
何だか少し新鮮です!
この日も会員の希望曲から題材となる曲が選ばれました。
「はじめての悲しみ」
ロマン派ともなると、曲のタイトルの意味するものも深いものがあります。日本語訳にした場合の解釈も再考することも必要になります。
"悲しみ"をシューマンはどの部分にどのように表現しているのでしょう?
いつも何気なく弾いている休符、音型に孤独感や憂いが含まれていることに気付き、その上で強弱記号を考えてみると記号に含まれる表情の奥深さにもより注意する気持ちが生まれます。
この小さな作品の中にあるドラマがはっきりと見えました。
西尾先生の講義は文学的にも感じられる掘り下げがあり、非常に私たちの心に響きます。
「トロイメライ」
まずは、トロイメライというドイツ語の解説から。一般的に「夢」と訳されていますが、それはどんな夢なのか?
ここをきちんと押さえておくことで、全体の捉え方も違ってきますね。
4分の4拍子であるのに、何とも4拍子らしくないフレーズ、バス進行・・・そして弾きにくい箇所も多い曲。
西尾先生が何度「へんちくりんな曲」と仰ったことでしょう!
この名曲を「変な曲」と素直に思ってしまっても良いのですね?そしてそのずれ具合こそが、「トロイメライ」の世界なのだとタイトル訳と繋がることが出来ます。
頑固なまでにシューマンらしさに満ちた、普通ではない手法にあふれた曲ですが「こだわりの多い曲は良い作品」との作曲家である西尾先生の言葉に、大きく頷くことが出来ます。
そしてこのような小品でも、一つの楽曲としての演奏の可能性を、ポイントを考えながら探ってみる時間もありました。
このシューマンの2曲は、先生方も演奏されたり指導したりと非常に耳馴染みの深い曲であると思います。私も2日前にレッスンしたばかりでした。小品はフレーズや音の一つ一つを余裕を持ってみていくことが出来ますので、深く理解出来、とても良い勉強になりました。
「甘い思い出」
メンデルスゾーンらしい、幸福感に満ちた美しい曲です。
このような細かい音の連続で書かれている曲ほど、落ち着いて譜面と向き合う必要があると思います。
楽譜では16分音符がびっしりと詰め込まれているように見えますが、やはり大事な音やフレーズはしっかりと存在していて、またフレーズとフレーズの関係もエコーや対比となっています。
伴奏形の細やかな動きに目も耳も奪われがちですが、作曲家の伝えたいものは意外とシンプルなのかもしれないと思いました。
そして時代は変わっても、バッハの頃から脈々と受け継がれてきたものも感じます。
「シンフォニア6番」
思えばインベンションのアナリーゼが始まった頃は緊張気味に、少々構えて受講していた記憶がありますが、既にシンフォニアに入っている今では1曲ごとの個性と向き合っていくのはむしろホッとする時間となって来ました。
今回印象的だったのは、フェルマータの部分ではこんなことも出来るのではないか?と、和声の進行の話から始まる西尾先生のお考えを聴くことが出来ました。
研究会では、少しずつですが和声を学び続けています。この下地があってこそこんなちょっとした部分での理解度もかなり違ってきたのでは?と思う場面でした。
新しい年も、小さな積み重ねの上に大きな実りのある素晴らしい年でありますように。
永瀬先生、西尾先生に改めて感謝申し上げます。
<文責:大原由紀>