2021年2月23日(祝)第3回土屋美寧子先生レクチャーコンサートを、かなっくホールで開催致しました!
コロナ禍の中ですが、安全対策には十分配慮致してご来場の皆様をお迎え致し、素敵な演奏を熱心な聴衆の皆様とご一緒に深く心に響く時間を共有させて頂きました!
今回は土屋先生の発案で、スライドも使ってレクチャー頂きました。来場者の方から、とてもわかりやすく聞けました!との感想を頂きました。レクチャーコンサートの詳細は、音楽ジャーナリスト菅野恵理子様がご来場頂きFacebookに投稿頂いたものを許可頂き転載させて頂きます。また、当日のプロコフィエフ「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ」、武満徹『11月の霧と菊の彼方から』の演奏がピティナのピアノ曲事典で公開されました!合わせてお楽しみくださいませ。
◇ 菅野恵理子氏「Facebookより転載」◇
昨日、土屋美寧子(pf.)&和波たかよし(vn.)レクチャーコンサートに伺いました。音楽的要素や歴史的背景から各曲を紐解いた後の、演奏が圧巻でした!
プロコフィエフ「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第2番」から。いきなり胸に迫ってきたのですが・・!その音楽が持つ魂がぐわっと剥き出しになって感じられたからでしょうか。作曲家が創造の瞬間に感じていたであろう高揚感や心の訴え。単なる音の強弱ではない、音楽に宿るその"圧"が、そのままヴァイオリンの弦と弓に重心として乗っている。それは演奏者自身が、音楽に身体全体で一体化しているからでしょう(身振りではなく意識が)。ソ連時代1942年~44年に書かれた曲ですが、第2楽章の皮肉を含んだ戯けの表情や、第3楽章の静けさの中に背筋が一瞬凍るような緊迫感など、音が意味をもって伝わってきました。
武満徹『11月の霧と菊の彼方から』は、前曲の"圧"からは解放され、音がどこからともなく生まれて消えゆく行方を聴きながらのピアノ、ヴァイオリンの澄んだ倍音も様々な表情をたたえ、最後は尺八のような和の風情も。武満が「音を作り出すというより、自然の中にある音を聞き出す」と述べていたことが紹介されましたが、まさにホール空間を生かした立体的な音楽作りで、生演奏ならではの醍醐味と改めて感じました。
シューベルト『ヴァイオリンとピアノのための幻想曲』は、ピアノのトレモロのような音型から始まる神秘的な世界に、ヴァイオリンの旋律が美しくどこか哀し気に響く。ピアノが和声の色合いや質感を変奏ごとに絶妙に描き分け、二人で奥行きある音の世界を描き出していました。中央部に置かれた変奏曲は「意に反して離されてしまった恋人への思い」を歌った歌曲をテーマにしているそうですが、その思いをどこかに抱えたこの曲のトレモロは、嘆きにも、樹々のざわめきにも、この世ならぬ幽玄の世界からの歌声にも思えます。特に後半で序奏が再現される部分。やはりシューベルトは、圧や重力さえ感じられない、どこか現世にはない世界を聴いていたのかなと思います。
全体を通して素晴らしいアンサンブルで、音楽同様に、お互いの存在を深く受けとめているからこそ、生まれる世界観を見せて頂きました。