富山の11月なのに、とても気持ちのよい秋晴れとなりました。土曜日55組、日曜日93組の方が参加されました。
アドバイザーには、佐藤祐子先生、白水芳枝先生、藤井隆史先生。来年は新幹線が開業しますから、上越新幹線+特急はくたかの組み合わせで入善にいらっしゃるのも今年が最後でした。
今年は何かの記念というわけではないのですが、ステーション代表の思いつきで、2台ピアノを準備しました。
いつもの入善コスモホールには、スタインウェイのフルコンサートとベーゼンドルファーのインペリアルがあります。
ホールのご理解とご協力、調律師長瀬さんの献身的な努力のおかげで、この大きなピアノを2台セットいたしました。
感謝申し上げます。
ドゥオールのお二人がアドバイザーということもあり、予想よりも2台ピアノの申し込みが多くありました。小さなお子さんのブルグミュラー、中高校の八手、グランミューズのクラッシック、ポップス、編曲ものなど。さまざまなジャンルが登場しました。2台ピアノ初体験の方もいらしたようです。
トークコンサートはドゥオールが登場です。
アドバイザーから一転し、ピアニストの顔となって袖から舞台へ出て行かれるのを間近に見ておりました。
緊張感とエネルギーを充満させた様子が、さっきまで一心不乱に客席で文字を書いていたお二人とは別人のようでした。
土曜日は、デュカスの魔法使いの弟子。サン=サーンスの動物の謝肉祭。華やかでドラマチックな音楽でした。映画的なイメージが舞台上にぱあっと広がります。
まさに魔法です。お二人の最新アルバム収録の作品でした。
日曜日は、ブラームスのハンガリー舞曲より。2台のピアノのためのソナタ。
ピアノ五重奏曲として有名な作品のブラームス自身による2台ピアノ版。緊密に構成された縦の響きと、よく耳にするメロディーの横の流れが、がっちりとひとつの音響になるのが見事。
この曲を生で聴けたのはラッキーでした。
佐藤祐子先生にはワンポイントレッスンで登場していただきました。
ドビュッシーは2台ピアノをならべてのレッスンとなりました。お得意のドビュッシーだと思います。亜麻色の髪の乙女、曲の由来からはじまり、最初から最後まで丁寧に指導していただきました。
ペダルは実際の楽譜に即して、左右両方の細かい踏み方を指示されました。
指はしっかりと使い、むしろ強靭な筋肉と骨格を要求されるようなタッチでした。
ブルグミュラーは、生徒の主張や個性を尊重するレッスンの見本のようでした。装飾音をどこで合わせるかとかいう問題も、そのテンポならばOKですとおっしゃり、クレッシェンドのずれもさっと直され、生徒の良い面が引き出されました。
合理的な教え方でもありました。おそらく佐藤先生のご性格やお考えならではのレッスンだと思います。
参加者のみなさんは、地元入善町をはじめ、新川地区にお住まいの方々が大半です。常連さんの顔も覚え、継続表彰も増えました。
また、富山市をはじめ県内外さまざまな地区からも参加があります。金沢や新潟、遠く神奈川からもいらっしゃいました。
中には、にいかわステップが好きなので、と言われる方があり、スタッフ一同で感激しています。
今年も全員に書かれたアドバイスシート。講評での先生方のお話。先生方へのQ&A。いずれも、参加者にみなさんやスタッフにとっては、一期一会の宝物です。どんなに技術的なことや、論理的なことであっても、先生方が人生をかけてむきあっているピアノですから、その人の全てがにじみ出て来るものだと思いました。
佐藤先生は、ナディア•ブーランジェの直弟子です。いったいこの歴史上の大音楽家と、目の前の佐藤先生がパリで重なるのだろうかと首をかしげましたが、佐藤先生の翻訳『ナディア•ブーランジェとの対話』の中に、87歳と21歳とあり、あらためて歴史とは継続しつつあるものだと思いました。
ブーランジェはフォーレの弟子。ソルフェージュ、ピアノ、作曲、理論、オルガン、指揮。全ての教師として輩出した弟子の質と量には驚嘆します。
ピアソラやバーンスタイン、リパッティ、コープランド、ルグラン、ガーディナー、フィリップ•グラス!いったいどういうことなのでしょう。
ブーランジェについては、ぜひ、佐藤先生の訳書をお読みください。ブーランジェのレッスンは、バッハの平均律を一週間でプレリュードとフーガを一曲ずつ暗譜するのが課題でした。フーガは一声ずつ楽譜に書くことで理解させたそうです。
佐藤先生のご指導には、このブーランジェから伝わっている歴史と伝統が含まれています。
コメント用紙をもう一度読み返し、先生のお教えに触れていただきたいと思います。
また、藤井先生と白水先生は、今をときめくドゥオールを結成してちょうど10年。
日本で最も有名なピアノデュオです。
お二人の講評はポイントを絞り、どんな人にも分かりやすく丁寧に、しかもとことん真剣にお話されます。アドバイスシートの文章も、まったくそのとおりです。
面白いのが、お二人が異なる視点でアドバイスしてくださることです。お二人が気づいたり感じたりすることが少しずつ違っていました。アドバイスの方法も、藤井先生はストイックなまでに可能性をどんどん追求していかれますし、白水先生はその演奏の良いところをさらにふくらませてくださるようでした。
お二人に共通するのは、とことん真剣であることです。
スタッフとして襟を正す思いでした。藤井先生はクラウス•シルデ先生に学ばれたキャリアがおありです。シルデといえば、ギーゼキング、マルグリット•ロン、そしてブーランジェに学んだピアニストです。
なにか、このステップが歴史的なものに思えてくるのは錯覚でしょうか。
にいかわステーションは7回のステップを実施してきました。
当日演奏される参加者のみなさまと、アドバイザーの先生方との、一期一会の出会いと交流を見守ることも、ステーションの役割かなと思いました。
この出会いの場が、参加者のみなさまのこれからのピアノ人生の指針のひとつになることを願っています。