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コンサートを聴く訓練の経験になるピアノステップの出演者席

ピアノステップの出演者席にじっとすわっているという経験が、実はコンサートを聴くときに役立っているというお話です。
ピアノステップを彦根地区で始めたときこの出演者席というものに多くの参加者が戸惑いました。ちっとしたカルチャーショックでしたね。ステージの横には大きな舞台袖があるのにどうして客席からステージに上がって演奏しまたもとの席に座り続けるのか?でした。これは全国のほとんどのピアノステップで統一して行われている進行方法で、ピアノステップを行うときに、通路もないような狭い会場でも動線を最小限に出来て混乱が少なくてすみます。
もう1つの目的は同じ部に出ているお友達の演奏を目の前で直前まで聴くことができるというものです。
仮に舞台袖に十数人が待機して出番をまっていると自分の出番までは他の出演者の演奏は目にすることが出来ません。
ただはじめはじっと座ってお友達の演奏を聴くことが困難な人が多かったようでこれが苦痛ですとアンケートに書かれたりしました。
実は彦根ステーションの事務局の栗田楽器の音楽教室である栗田音楽教室に
は3つの発表の機会があります。ひとつがピティナピアノステップ彦根地区、そして夏にある発表会、それからクリスマスソングを演奏するコンテストです。
ピアノステップに参加しはじめたころは発表会はもっと気楽にしましょうということで舞台袖に集合して終わった人は会場に会場後ろのドアから戻るようにしていました。
ところがピアノステップに比べて会場がどうしても騒がしいのです。会場全体をビデオで記録して検証してみると出演が終わった子供は保護者の席にまっしぐらに駆け寄ります。「あーん緊張したぁ」とかなんとかお母さんに話しています。これがずっと続くのでざわざわが会場内に残るのです。自分の演奏のときに会場が騒がしかったらとても悲しいですよね。
そこで思い切って発表会もピアノステップと同じように出演者席からステージへという方式に変えてみました。するといままでがウソのように静かな発表会になりました。
そういうわけで栗田音楽教室の生徒さんは年に3回も1つの所にじっと座って人の演奏を1時間も聴くという修行をしているのです。一見児童虐待のような光景ですが、我慢できない小さい出演者はお母さんの方へ手をふったり中には親のもとに帰ったりすることもありますので、実態はそれほどひどいことでもありません。ピアノステップに最初に参加した子供に主にこのようなキョロキョロして落ち着かない人が多いのですが、それはこの状態がいったいいつまでつづくのかが分からなくて不安になるのです。それでも当日の同じ部の参加者がみんな一緒に演奏を聴くと言う同じ修行をしているので大多数の出演者は最後まで頑張ります。これが修行だというのはこのような訓練をしていると、大声を出すとか立ち上がるとか人の迷惑になるような行為をつつしめば案外、後は自由にしていてもいいんだということが分かってきて、なんども経験するとリラックスして出演者席にいることができるのです。

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さてこのゴールデンウィークに滋賀県大津市のびわ湖ホールであった西日本初のラ・フォル・ジュルネびわ湖、2万数千人の来場者があって大成功でしたが、この音楽祭に小学生の代表としてびわ湖ホールのメインロビーの特設会場で栗田音楽教室の俵谷さんがきらきら星変奏曲を演奏しました。(ちょっと自慢しました) 当日のようすはココから うれしくて栗田音楽教室の生徒さんにも事前に呼びかけて多数が応援に会場に集結しました。とても立派な演奏でした。
さて生徒さんたちはその後、そのまま帰ったわけではありません、本物の音楽を聴く事が上達の近道と先日のピアノステップ彦根地区のアドバイザーの先生にも講評のときにお話いただいたので、5月1日の日もまたその翌日の5月2日の日のプログラムもできるだけチケットを買ってプロの演奏家のコンサートにもできる限り入場しました。いつもピアノステップで鍛えられた生徒さんたちは自然にコンサートを大人といっしょに楽しむことが出来ました。ラ・フォル・ジュルネびわ湖をご両親と存分に楽しむことが出来てよかったですね。

よく緊張に耐えかねて コンサートの秩序についていけなくて お行儀がわるい子になって泣き叫んだり イスの上に立ち上がったりする子供がいますね。そのため通常は未就学児はお断りのコンサートが大半です。でも、ラフォルジュルネはカジュアルにクラッシック音楽を楽しむのが、そもそもの願いなのでなんと3歳児から入れるのです。
ラフォルジュルネびわ湖では、ホールでの有料公演を聴いた人には、大ホールの前のホワイエでおまけの、サロン風のコンサートが開かれました。このコンサートには大勢の子供達がいましたが、みなお行儀良く音楽を鑑賞していました。

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しかしメインロビーでの無料コンサートは泣き叫ぶ子供や走り回る子供、はてはステージによじ登る子供までいて、お行儀が悪い(それが普通の子供かも知れませんが)のです。2種類の子供がいると考えられるのです、良い子と悪い子ですか?いいえ、そうでなくて訓練を受けている子と
訓練されていない子供です。最初は誰でも訓練されていない子供なので就学児になっても親といっしょにコンサートにいけない子供もいるのですが、じっと音楽を聞く訓練をしておくとだんだん長い時間のコンサートでも聴けるようになります。滋賀県の人口は約140万人ですが、統計によるとクラシック音楽が好きですという人は全人口の約0.7%なのだそうですから、全員集合しても9800人、2万数千人はどこから来たのか、京都から大阪からも来たのでしょうが、縁日のようなノリで来た人も多いのでしょう。このカジュアルなノリの人たちをクラシックファンにすることには、どうしたらいいのでしょうか?気軽さと無秩序とは違うようにも思われます。皆でコンサートを楽しむためのいくつかの約束事を守れるようにすれば
ルールの押し付けでない自立的な秩序を得ることが出来て、皆にとって、もっと明るい未来がやってくるのではないでしょうか?10年まえに國谷尊之先生にトークコンサート「名曲はなんで名曲なんだろう」をお願いしたときを思い出します、小さい子供が客席で走り回っていましたが先生は「小さい子はこの間までオムツをしてた赤ちゃんだったんだから、走り回っていても気にしませんよ」って言ってくださいました。(そのときの幼児は今は高校生になってショパンとか弾いています。)そして「みんなピアニストを作ることばかり一生懸命だけど、そんなにピアニストばかり作ってどうするんでしょうね、そもそも聴く人がいなければピアニストの仕事がないのにね、ほんとうは未来の聴衆を増やすことが大事なんですよ」とおっしゃっていました。ピアノステップやトークコンサートは地味に、でも確実に未来の聴衆を育てているのだなあと思ってがんばりたいとあらためて思ったのでした。


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