角野美智子先生をお招きしての千代田支部第一回ピアノ指導者セミナーが開催されました。
『原石を磨く指導法〜全ての可能性は生徒の中に〜』のテーマの基に進められた講義は来場された指導者の皆様に多くの気づきを与えてくださいました。内容の濃いセミナーを一言でお話するのは難しいですが、生徒の内なる能力を引き出すために、優しい楽曲などには伴奏などを付け生徒自身に楽曲のイメージを膨らませようと試みたり、和声進行を理解させる事でフレーズ感を大きくもたせたりする方法など、日頃のレッスンで行っている指導法を惜しみなくお話下さいました。中でも講義中に角野先生のおっしゃった「指導をする上で目先の結果を追うのではなく、将来生徒が音楽を自ら理解し楽しめる実力をつけられるよう長い目で指導する」というお話には改めて共感いたしました。
私も長年子供の演奏を聴いていると、指導者によって作り込まれた音楽と演奏者自身から出てくる音楽は舞台袖でさえも聴いていてすぐに判ります。確かにコンクールなどは一発勝負でテクニックや表現力などを求められますので、ある程度の作り込みは致しかたない部分ではありますが、でもそこに主体性(本人が楽曲を理解したうえでこう弾きたいetc.)がないと楽曲に対しての演奏がチグハグなものになってしまいます。
以前、コンクールで何度か角野先生のご子息の演奏を聴いたことがありますが、印象深かった演奏のひとつにF.Chopin Waltz Op.34-3を弾かれた時がありました。(半端なく激戦の頃で確か隼斗君は2階級の飛級だったような)当時から隼斗君のテクニックはズバ抜けていましたが、でもそこにはやはり子供ならではの曲の捉えかた、いわゆる主体性がきちんと備わっていて「ほ〜〜」なんて思って聴いていた記憶があります。そういう演奏は聴衆を魅了しますよね。
なぜか昔話になってしまいましたが、そんなことも振り返ると今回の角野先生のセミナーは個人的にもかなり説得力のある内容でした。またセミナーにお越しいただいた参加者の皆様に対して『何か持ち帰ってもらいたい』という謙虚で誠実な姿勢にも頭の下がる思いで、タクト並びに千代田支部も本質からブレない誠実な運営をしていこうと改めて心に刻んだ1日となりました。